よってたかって恋ですか?


    幕



先週末に大きな台風が来たのに、
またしても
この週末の三連休に何だか怪しい雲行きだとかで。

  それもまた、昨夜の皆既月食が呼んだのかなぁ、と

テレビに映し出されていたのは、
朝とお昼の真ん中のニュースショー。
天気図の端っこに描かれた渦巻きへの解説を聞きながら、
イエスがそんな他愛のないことを訊いてくる。
昔からの言い伝えもあながち世迷いごととは言い切れぬ、
月の存在は地上へ結構な影響を醸しているというの、
身に迫る格好での話をしたばかりだったこともあり。
それでという“ねえ どうなのかな?”なのは明らかだったが、

 「う〜ん、
  そっちは どっちかって言うと
  地球温暖化のせいらしいけれど。」

 「あ・そかそか。/////////」

そういや、少し前にもそんな話をしたっけねと。
そこはさすがに小さな子供じゃなし、
九月に襲来した折りの話を思い出して
“そうそう・そうだった”と
自己補填したらしいヨシュア様で。
あははーっと やや照れ臭そうに笑ってから、

 「そ、そういや あのさ。」

話題を変えようと思った辺り、
悪びれなくて また可愛い…と
思いかかったブッダ様だったものの、

 「梵天さんて広報の人なの?」
 「……何でまた、そんなこと訊くの。」

間が悪いったら ありゃしない。(笑)
せっかく ほのぼのした空気へまったり和んでいたというにと、
キッチンスペースにて ミルクティーを淹れていた尊い御手が、
思わずのことながら 一時停止しちゃったほどで。

 「え? いや、前に名刺をもらったんだけど、
  そこには仏閣営業部ってあったから。」

でも、ブッダのスマホの名簿録には“広報部”とあったのでと、
何て思惑もなく訊いたイエスだったらしく、

 「名刺?」

 「うん。ほら先の冬に、
  あのスノウドームを広めてらしたでしょ?
  そのときに、問い合わせ先の話になって…って、
  ブッダ目が怖いし光ってるけど、
  もしかして私に怒っているのかな?」

 「ああ、ごめんごめん。つい、ね?」

最初はほら、私にスカウトの声を掛けて来たように、
あちこちで逸材発掘してプロデュースって活動が主だったから、
それで“広報担当”だったんだけど…と
ちゃんと説明をしてくださったれど。

 「イエスってば、ちっとも警戒しないんだもの。」

そこが問題なのにと、やや上目遣いになる如来様。
とはいえど、

 「? 警戒してどうするの。キミの守護神さんでしょう?」

今回も、あれこれと曖昧にした部分も多かったというに、
そうまで少ない材料から、それは鮮やかに謎を紐解いて、
的確に対処してくれた、頼もしい人じゃないのと。
手放しでのベタホメで。

 「それは…そうなんだけど…、うん…。」

律義で誠実、
官能への刺激という恥ずかしいことさえ
問われればちゃんと伝えようと頑張るほどの釈迦牟尼様でも、
こればっかりは その説明についつい口ごもるほどに。

  相変わらず、微妙な確執があるようです。(笑)

もじょりと言葉を濁しつつ、それでも丁寧にお茶を淹れ、
普段使いのマグカップを二つ、
一応の砂糖壷と一緒に卓袱台まで運ぶ。
そろそろ朝晩だけでなく、
陽が昇り切った頃になっても
温かい飲み物にホッとするよな気候になって来て。
さすがに、ふうふうと何度も吹き冷まさねば、
猫舌のイエスには難物なようだったけれど。

 「うん、美味しいvv」

特にブッダの淹れてくれるミルクティーは最高だと、
こぼれる笑みにも惜しみはなくてvv

 「あ、ありがとお…。//////」

曲がりかけてたご機嫌も
あっさりとろけたらしい如来様だったりし。
テレビの画面は今日の特集へと切り替わっており、
秋と言えばの美味しいもののお話を展開中。
今が旬の秋の実りやお魚や、
それを用いたお料理にスィーツ、
そんなあれこれがいろいろと紹介される中、

 【 今時分と言えば、新蕎麦ですよ、ソバっ。】

芸人さんだろう、賑やかし担当の男性タレントが、
自分が取材して来たお話を始めるに至り、

 「…ソバって、あの お蕎麦?」

イエスがキョトンとしたのこそ怪訝だと、
ブッダもまた、どうしたの?と伺うようなお顔をしたが、

 「だって…蕎麦にもそんな、旬とかあるの?」
 「うん。蕎麦の実が取れるのが今時分だからね。」

 ほら、枕に入れる素材に“蕎麦殻”ってあるじゃない。
 いやあの うん、それは知ってるけど。

何が引っ掛かるものか、まだお顔が晴れないヨシュア様で。

 「だって、ラーメンやうどんも小麦を使うのに、
  いちいち“今が旬だ”なんて持ち上げないでしょう?」

 「…うん、そうだよね。」

そちらは今や大半に輸入品を使う関係もあって、
いつが旬だか曖昧だったりし…と、
ちょっとばかり事情が違っているからなのだが。

 「確か、地元の粉しか使ってないと謡ってるところでは、
  こだわってるだけあって、
  旬のときは告知してらっしゃるって。」

いつだったかドキュメント番組を観ていて、
へえ そうなんだと感心した覚えのあることを何とか思い出し、
そうと告げれば、

 「へ〜え、そうなんだvv」

やっぱりそんなお返事をするイエスだったが、
でもでも、
ただ感心しただけじゃあなくて、どこか嬉しそうでもあって。

 “……ああ、そうか。”

同じ大地からの恵みなのに、
不公平があるのはと微妙に引っ掛かった彼なのだろなと、
何とはなく気がついた。
まま、もっと厳密に言えば、
昔むかしの日本で麦といや 大麦のほうで、
蕎麦は小麦よりも日本には馴染み古い作物だからとかどうとか、
そんな由来由縁もあるのだろう。
米の文化も小麦文化も
双方ともに存在した土地で生まれたブッダと違い、
あれれぇ?と感じたらしいイエスの素直さが、
何だか新しい発見なようで。

 「…どうしたの? 面白い場面でもないのに。」

甘い苦笑を押さえ込めず、口許がついついほころぶブッダなのへ、
そこは気がついたらしいイエスが、
今度はこちらへかっくりこと小首を傾げて見せて。
そんな所作がまた、素直が過ぎての稚
(いとけな)くてたまらぬと、

 「〜〜〜〜もうもう、イエスってばvv///////」
 「え?え? 何の話?」

や〜んじゃなくて教えてよぉと、
お髭のいい大人が“ねえねえ”と甘えかかった
秋の昼下りでございますvv




     (後篇へ)






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 *ということは、
  とうもろこし粉の
  トルティーヤ(ブリトーやタコスに使う生地)にも
  旬があるのかな?

  幕間ですが 前後編。
  何だか妙な段取りです、すいません。

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